腹腔鏡下胆のう摘出術
腹腔鏡下胆のう摘出術は、おへその下と上腹部に計4ヶ所の5~12mmの穴を開けて、炭酸ガスにてお腹を膨らませた後、腹腔鏡というカメラを挿入しテレビモニターに映した画像を見ながら胆のうを摘出する手術です。手術時間は胆嚢の状態にもよりますが1時間程度です。
腹腔鏡下胆のう摘出術は、従来の開腹胆のう摘出術よりキズが著しく小さく、痛みも軽度で早期の社会復帰が可能であり、キズもほとんど目立ちません。からだに優しい手術です。
ただし、高度な炎症や周囲臓器との癒着、術中の胆管損傷、出血などの理由で開腹手術に移行する場合もあります。
対象となる病気は、胆石、胆のうポリープなど
現在、腹腔鏡下胆のう摘出術の適応疾患は、胆のう結石、胆のうポリープ、胆のう炎、胆のう腺筋症などの良性胆のう疾患です。このうち急性胆のう炎は、発症から早期に適切な治療を行わなければ非常に重篤となる病態であり、ガイドラインでも急性胆のう炎の治療は「早期の腹腔鏡下胆のう摘出術」を推奨しています。当院では、急性胆のう炎症例においては病態が重篤化する前に行う早期の腹腔鏡下胆のう摘出術を可能な限り治療の第一選択としており、手術までの期間、術後在院期間は著しく短縮し、患者様のお身体・経済的負担も著しく軽減しています。このように、症状があり、胆のう炎を伴っている胆のう結石、癌の疑いが出てくる10mm以上の大きさの胆のうポリープは、胆のう摘出術の適応となります。しかし、胆石がある、胆のうポリープがあるからと言って、全ての患者様が胆のうを取らなければならないという訳ではありません。また、炎症の程度や現在かかられている他の持病などから腹腔鏡下胆のう摘出術が出来ない患者さんもいらっしゃいます。胆のうの病気でお悩みの患者様は、まずわれわれ専門の医師に相談して頂くことが大切です。
検査・手術・入院の流れ
当院では、腹腔鏡下胆のう摘出術は下記タイムスケジュールにて検査・手術を行い、合併症がなければ入院期間は4~5日としています。
① 外来にて診察。超音波、CT・MRIなどの術前検査を行い、手術日を決定。
② 月曜日 午後入院、手術準備・説明
③ 火曜日 午後手術
④ 水曜日 朝より飲水開始 昼より食事開始
⑤ 木曜日もしくは金曜日 退院
⑥ 翌週外来受診 診察、摘出した胆のうの病理検査結果説明
単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術
—キズの見えない手術— を行っています
切開部位: 左:腹腔鏡下胆のう摘出術 右:単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術
単孔式内視鏡手術は文字通り1ヶ所の切開創(キズ)から行う内視鏡手術であり、美容的に非常に優れている点から脚光を浴びており、われわれも2009年5月より単孔式内視鏡手術をいち早く導入し、胆のう摘出術以外にも大腸切除、虫垂切除、肝臓手術などで行っています。
現在、最も多く施行している単孔式内視鏡手術である単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術は、おへそに1ヶ所の穴をあけ、そこだけで腹腔鏡下の手術を行います。4ヶ所に穴をあける通常の腹腔鏡下胆のう摘出術と比較し、術後はおへそに1ヶ所のみのキズが隠れてしまうため「キズの見えない手術」と言われる美容上大変優れた術式であり、患者さんにも非常に喜ばれています。
単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術の術中所見: おへその1ヶ所の穴に全ての機械を入れて、1ヶ所の穴だけで手術を行っています。
術後創部: おへそのキズは、隠れて全く見えません
日本内視鏡外科学会技術認定医が担当します
1ヶ所のみのキズのため、従来の腹腔鏡下胆のう摘出術と比較し、手術操作や視野の展開が制限されるために高度な技術が必要とされます。そのため、単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術の術者は内視鏡手術手技に習熟している(たくさんの手術経験のある)術者に限定し、適応疾患も限定すること(高度な胆のう炎症例は適応外)で安全に手術を行うことを心がけています。当院では、術者は「日本内視鏡外科学会技術認定医」に限定しております。
単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術においても、通常の腹腔鏡下胆のう摘出術と同様のスケジュールで、手術前日に入院し、手術後2~3日で退院可能です(手術翌日に退院出来る場合もあります)。また、おへそのキズは溶ける糸で、皮膚の下で縫っており、抜糸の必要はありません。
「胆のう専門外来(内視鏡外科外来)」を担当する渡邉医師は、500例以上の腹腔鏡下胆のう摘出術の執刀経験があり、なかでも100例以上の単孔式腹腔鏡下胆のう摘出術を執刀しております。